設計事務所の役割

 設計事務所の仕事は、建築主の依頼でスタートします。
そしてまず建物を使う方、住む方の希望や生活習慣、建設地の状況、環境などしっかりチェックして設計に入ります。
まさにお医者さんが細かく診断し、最適な治療をするようにしっかり調べ、それぞれの診断結果に合わせて、最適な建物のカルテ(設計図)をつくるのです。
建物は、人間の健康にとって大切なものであり、それを設計する事務所は、まさに健康や快適さを考える「建物のドクター」ともいえます。
 建物を建てるうえで、気になるのがさまざまな法規制です。
商業地か、住宅地か、道幅はどれくらいなのかにより建物はいろいろ制限されますし、工事中の騒音、日照など隣近所への影響なども解決しなくてはならない問題です。
これらの問題に、建て主さんの身になって対応する設計事務所は、いわば「建築の法律コンサルタント」とも言えます。
 こうしたい、ああしたいといろいろ希望があっても建築にはあらかじめ予算があるもの。
しかしその資金を上手に生かし、希望を最大限かなえるのも設計事務所の腕です。
建設会社から独立した立場で、建て主さんの利益を守る設計事務所は、建設会社から出された見積書をしっかりチェックしたり、建物そのものにかかる費用から、実際に使用してからかかる費用まで経済性の問題をも考えます。
まさに設計事務所は「建物づくりの経営コンサルタント」でもあるのです。
 建物への夢や希望をどんなカタチにするか、いかにオリジナリティのある空間を創造するか、建物という舞台で生まれるドラマを 演出するのも設計事務所です。
階段の場所や照明の位置ひとつでもドラマはいろいろ展開することでしょう。
オリジナリティのある建物づくりであなただけのドラマをつくりだす設計事務所は、「建物づくりの演出家」とも呼べます。
 設計図づくりだけを建築家の仕事と考えている方がずいぶんいらっしゃいます。
しかし現場に行き、設計図通りに工事が行われているかを監理するのも設計事務所の大切な仕事です。
しかも建設会社に属さない設計事務所だからこそ、品質管理など厳しくチェックできるのです。
設計図を楽譜とすれば、その図面通りに工事 (楽譜)が進んでいるかをつねにチェックする建築家は、「建物づくりの指揮者」とも言えます。
 「建物は住んでみたり、使ってみないとわからない」と言いますが、設計事務所の仕事も建てただけでは終わりません。
年月とともに変化する建物を使う方、住む方の声を聞き、快適に過ごすためのアドバイスからアフターケアまで、しっかりフォローします。
建て主さんとの信頼関係で結ばれた設計事務所は、いわば建物を通じての「一生のパートナー」。
我々設計者は良きパートナーになるべく日々研鑽しております。